不機嫌なオンナ

彼とケンカ以来の夜デート。


その日は私がお店を予約することに。

一度も行ったことのない夜景が綺麗らしい

しゃぶしゃぶ屋さんを予約して、彼にLINE。

打ち合わせ中で、返事はなかったけど。


ケンカ以来だし、雰囲気の良いところなら

ラブラブ仲直りができそうと期待してみた。


通されたのは一番奥の個室。

大きな窓からキラキラ夜景がよく見える。


だいぶ遅れて来た彼は、着くなり一言。

「ここ、よく来るんだよ。」って。


え?

私は初めてだよ。

よく、って誰と?


胸がチクチク…

ケンカしたいわけじゃないから、聞かない。

彼は疲れた顔してる。

たぶんあんまり機嫌がよくない。


いつも彼はデート中でもたくさん色んな人から

連絡が入る。

LINEとかメールとか電話とか。


まだ乾杯のドリンクも決めてないのに。

「ちょっとごめん。」って電話。

さっきの長引いた打ち合わせは、クライアント

からのクレームだったみたい。

彼のスタッフに、今日中に謝罪するから

今すぐ調べて原因見つけて連絡してって。


これじゃ今日はケンカデートを挽回する

チャンスもなさそう。

というかデートどころじゃないよね。

ご飯食べてる間も、電話が何度も。


「俺がくるりんの好きなところは、

素直なところ。いいことも悪いことも、

全部顔に出て、よくわかる。

表情がくるくる変わって、面白いよ。」


てことは、今不機嫌な顔してたってこと?

私、全然チョーシが出ない。


「セックスした女は忘れるけど、

くるりんのことは一生忘れない。

こんなに長い間付き合って、

もう一生忘れられないよ。」


そんなの全然嬉しくない。

忘れないってもう別れる前提じゃん。


「一緒の老人ホーム入って仲良く暮らそう。」


やだ。老人ホームに入っても、こんな風に

ヤキモチ焼かなきゃいけないなんて。


全然ちゃんと話せなかった。

彼もとうとう

「仲良くしたいのに、何なんだよ…」

「面倒くさいと嫌われるぞ。」

ってギブアップ。


帰り際、彼は私を抱きしめて言った。

「また近いうちに会おうな。時間作るから。」


「本当に?怒ってない?私結構ひどかった。」


そしたら彼は、

「大丈夫。早く機嫌直せよ。またすぐな。」

って私のおでこにキスをした。


「俺、これから謝罪しなきゃ。

大きな会社の看板背負って、ふんぞりかえる

生意気な若いヤツに、申し訳ありませんって

頭下げるんだよ。電話だけどな(ニヤリ)」


それでバイバイ。

いつものチュウもなし。


泣きたかった。

私は自分のことばっかりで、

彼の事なんて考えてなかった。


そんな状況なのに会いに来てくれたこと。

余計、疲れさせちゃっただけだったと思う。


私のことが大好きで、他の人には見向きもしない

一途で優しい彼。

私とも会うけど、他にも浮気相手がいる遊び人の彼。


本当の彼は、彼しか知らない。

私の目の前の彼がどんな人なのか、

私が決めて、その自分の目を信じる。

誰かに相談したって、私が彼を遊び人だと

思いながら話せばそう聞こえるし、

一途だと話せばそんな人だと伝わる。

それだけのこと。


私の人生は、私の判断と決定で作られていく。


完全復活にはほど遠い。

でもきっと、このネガティブ期間に

悩んで苦しんだことは私の肥やし。

いつか綺麗なお花が咲くと思うのです。