Pulse

くるりん

朝、ビクビクしながら彼を起こす。

だって、いつも寝起きは機嫌が悪いんだもん。

朝ですよーってラブ全開で起こしたところで、

「あぁー?」ってヤンキー調の返り討ち…

ひぃぃぃっ(ガクブル)


「今日の行程はまったく心配いらない」

彼はそう言うけど、私は超緊張してた。

去年は通行止めで入れなかった道。

去年は眺めるだけだった遠くの景色。


スタート地点は観光客で溢れている。

彼は前を歩く人をぐんぐん追い越していく。

彼の右左は、私の右左右もうすぐ左くらい。

脚が長いから、1歩がとても大きい。

速いなぁ。


彼は所々で立ち止まり、私を待ってくれる。

そのたび彼は、追い越した人たちに

再び追い越されて、デッドヒートみたいに

なっている。

(本人たちはそんなつもりじゃないだろうけど)


彼にお水をもらって、汗を拭く。

背の高い彼を見上げて、キュンてなるけど、

そんな場合じゃない。

リュックにお水をしまってもらって、再び。


どんどん遅れて申し訳なくて早足で歩いても、

全然差が縮まらないどころか遠のいていく。


「俺、ゆっくり歩いてるぞ」


上り坂も、木の根も、石ころも、水たまりも、

彼の足元には何もないみたいに悠々と歩いてる。

私の地面だけがデコボコなのか。


心臓が口から飛び出そう。

息を吸ったり吐いたりも忙しすぎる。


次はやっとランチ休憩だって。

その響きだけで、極楽浄土…