正夢

彼の仕事のお手伝いに呼ばれた。


遂に、遂に…仕事「も」デキル女の出番!!!


それなのに彼はランチからやたらと

ハイペースでお酒を飲んだ。

ロックを「もうちょっと注いでよ」ってお店の人にも

絡んでる。

なんかあった?


真っ昼間のお店のカウンターで、

キスしようとしたり、

スカートの中に手を入れようとしたり、何か変。


私も付き合って飲んでたら、結構酔った。

エレベーターでたくさんキスして、

「チン」てドアが開く寸前。

私のお腹をポンポンて叩いて、

「油断してただろー」ってニヤっとした。

そちらも貫禄あるお腹ですよ(笑)


お部屋に戻ってたしかに仕事が山積み。

もうあんまり時間ないけど、できるだけ進めたい。


それなのに。


「まずはさ、コーヒーブレイクしよう」って、

まだブレイクしかしてませんけど?


彼は珍しく私にまとわりついてくる。

無理矢理キスしたり、お尻に抱きついたり、

子供みたい。変なの。

「やっぱりセックスしよう」って。


そしたら仕事する時間ないよ。

まずは少しでも進捗したい。


抵抗する私を引っ張って、ベッドへ。そのまま。


それで終わってそのまま私の上でイビキをかきはじめた。

重くて苦しくてもがいたけど、そのまま私も落ちてしまった。案の定起きたら外は暗い。


「5分でシャワー浴びて、5分で支度して」


彼の夜の部開始まであと20分。


慌ててタクシーを捕まえて、目的地を告げた彼。

初めての場所。


ランチの時、誰かと夜の部について電話してて

優しい話し方だったから、いつもの親友かなって

思ってた。


タクシーの中、彼は私の手の上に手を重ねた。

でもこっちは見ない。何か考えて、自分の世界。

外も見ない。私の話に相槌もなし。


信号でスタックしてるタクシーに、

「何でこんな時間かかるの?」って

そりゃ夕方は仕方ないじゃん。

ピリピリしてイライラしてる。


どうしたんだろう。


ふとこっちを見たから嬉しくてニンマリしたら

「子供みたいだな」ってまた目をそらした。


「〇〇ホテルって珍しいね」って言うと、

「あ?ああ」で会話終了。


仕事帰りの人たちで、交差点は人だらけ。

ノロノロタクシーはやっと着いてドアが開く。

いつもの私はキスをせがむけど、やめといた。

ただでさえ遅れてイライラしてるもん。

とっとと降りて、彼を待つ。


彼は「じゃあな」ってハイタッチ。

私を振り返りもしない。


私が振り返ると、彼に駆け寄る若い女の子。

ロングヘアのその人と、彼はエントランスへ。


私は彼に背を向けて帰路へ。


正夢じゃん。