コの字

ディナーは、カウンターだけの焼鳥屋さん。

あんまり人通りのない道に、ポッと灯りが見えた。

ドアを開けると、人で溢れているその不思議。


お客さんのひとり、美人なお姉さんが、

じっとこちらを見つめるから、

何度も何度も目が合って、お互いニッコリ。

彼の知り合いかなって思ったけど、私を見てる。

カッコいい彼といるの、いいなって見てたのかな。


彼がボトルキープをしてるお店の全国マップを

作ったら、隠れた名店マップになりそう。

けど、混雑して予約取れなくなっても困るね。


彼が連れて行ってくれるご飯はいつも、

美味しいのはもちろん、雰囲気が好き。

カウンターに用意してくれた席に座ると、

お店の人も、他のカウンターにいるお客さんも、

通っている彼のおかげかもしれないけど、

歓迎してくれている感じで、居心地がいい。


その後、シックな大人バーに寄ったの。

彼が前に来た時、わたしを連れて来ようって

思ったんだって。

そういう、会ってない時に思い出してくれるの、

そして、そういうことを教えてくれるの、

めちゃくちゃ嬉しい。


一人では、扉に近付くのも怖い感じ。

外から中の様子は見えなくて、ドアを開けると、

木の長いカウンターに、スーツのバーテンさん。

刑事ドラマに出てきそう。

大人の世界にお邪魔します。


彼がオーダーしたお酒は喉に染みる。

名前は忘れたけど、お砂糖で甘くしたレモンと。

全然カッコよく飲めないやつ。

からくて、ウゥッとなって、カーッとなる。

こんなのおかわりする彼はどうなってるの?


カウンターのお隣では、おじさん2人が滑落の

危険すぎる武勇伝を語っていた。

よくご無事で。

私たちは、言葉少なく、聞き入ってしまった。


帰ったら、一緒にお風呂に入ろうかって彼が。

静かなバーで、そんなこと小声で言うから、

お酒も余計にぐるぐる回る。


手を繋いでフラフラ歩いて、素敵な雨上がり。

ねえほんとに。

彼といると、夜がどうしてこんなに特別なの。